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高森明勅
2012.10.7 09:02

産経新聞10月6日「女性宮家」記事が裏付けた「世紀の大誤報」

産経新聞は、10月4日付の「世紀の大誤報」よりも、
むしろ6日付の紙面によって一層、信頼を失墜した。

メディアと言えども所詮、人間のやることだ。

完全無欠なんてあり得ない。

だから、時には誤報も避けられないだろう。

確かに今回の産経新聞の誤報は、
たちが悪いし、事柄の性格上、余りにも重大だった。

だが、逆にそうだからこそ、
事後の対処の仕方が大切だ。

大きな過ちだったけれども、
産経新聞が、皇室典範改正にからむ自社の政治的な思惑も越えて、
誠実に、率直に非を認め、謝罪して、記事を訂正すれば、
それはむしろ評価に値することだったはずだ。

しかし残念ながら、6日の記事は完全に開き直ったものだった。
「政府は…提出を断念する方針を固めているが、
(政府の方針を公式に伝える)
藤村氏は『必要ならば提出する』と述べた」という、
苦し紛れの捩れ切った文章まで、飛び出した。

だが、「断念する方針」がもし事実なら、
産経新聞は6日に、何故あれほどの紙面を割いたのか。

1面の半分を占めるトップ記事、
2面の「主張」、
5面「女性宮家に関する論点整理の要旨」、
21面3段を使った記事。

じつに盛り沢山だ。

そもそも、既に政府が「断念」した典範改正案に対して、
わざわざ社説で批判する必要がどこにあるのか。

「主張」では
「女系天皇に繋がる懸念は依然、消えていない」と、
心配している。

側室不在の状況下、
男系限定は皇室の存続を不可能にするのだから、
まことに馬鹿げた「懸念」だ。

だが、そんなことより、
政府が「皇室典範改正を断念」(4日トップ記事の見出し)
したのに、何故「懸念は依然、消えていない」のか。

実に不思議だ。

1面の「論点整理」にケチをつけた記事も、
既に「断念」されたプランなら、
こんなゴタクを並べるには及ぶまい(中身も見当外れだが)。

6日の紙面そのものが、「世紀の大誤報」を裏付けている。
高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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